
麹が和食の基本調味料で、なくてはならない醤油や味噌、お酒などの原料なのは、ご存じですよね?
そこまでは私も知っていました。
そしていきなり話は飛びますが、小さい頃、私は祖父母の家で仕込んだ手づくり味噌、よくいう田舎味噌で育ちました。
東北出身なので、やや塩気が強めの赤い米味噌です。
それを当たり前のように食して育ち、買ったものを食べる機会はなかったのですが、独立して一人暮らしするようになってからは、自分で味噌をつくるなんて発想は皆無で、市販の味噌を買って過ごしていました。
でもですね、「手づくり味噌」「手前味噌」という言葉をよく聞くようになり、しかも手づくりの味噌はひと味違う、という話。
「ん??確かに!いつも買って食べているけど、小さい頃食べてた味噌って、もっと旨味というか、深みがあったよね??」
と遠い記憶が蘇ってきました。
「それなら自分でつくってみよう!」と思い立って仕込んでみたのが5年前。
5年、というキリのいい数字というだけなのですが、今回それを機に、味噌をつくり始めて知った「麹」のことや味噌づくりで感じたことをまとめてみました。
麹の効能・効果
栄養を吸収しやすく手助け
麹にはアミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、ペクチナーゼなど多くの酵素が含まれていて、アミラーゼはデンプンをブドウ糖に、プロテアーゼはタンパク質をアミノ酸に分解するなど、身体に食材の栄養を吸収する手助けをしてくれます。
効率よく吸収が行えることで、胃腸の働きをサポートします。
腸内環境の改善
麹に含まれる酵素には、オリゴ糖を生成する働きがあります。
オリゴ糖は腸内細菌“善玉菌”の好物のごはん。
オリゴ糖が増えれば善玉菌が増える=腸内環境が整い、免疫力もアップ、となるのです。
特に、米麹からつくる甘酒は腸によく働くといわれています。
ビタミンの生成
麹菌は自分が代謝される時にビタミンB1やB2、B6、ナイアシン、パントテン酸、イノシトール、ビオチンなど肌の代謝を促進するビタミン類をつくり出します。
ビタミンと言えば、疲労回復に効きますが、肌の代謝にも必須栄養素。
お肌の改善にもおすすめなのです。
麹の種類
さて、いざ味噌をつくろうと調べてみると、味噌の原料になる麹にも種類があって、「米麹」、「麦麹」、「豆麹」というのが出てきました。
いったい何が違うのか?というと、麹菌を繁殖させる穀物の違いで、それぞれの麹についてもう少し詳しく調べてみると、
【米麹】
蒸した白米に麹菌を繁殖させたもの。
日本の伝統的な発酵食品と言われ、味噌や醤油のほかに、清酒、甘酒などの原料にもなる。
【麦麹】
麦に麹菌を増殖させたもの。
味噌や醤油のほかに、麦焼酎原料としても使われる。
米麹より香りが豊かな割には、味噌にした場合、米麹よりもあっさりとした味わいになる。
【豆麹】
豆に麹菌を増殖させたもの。
タンパク質が多いため旨みの多い味噌ができ上がる
大豆を使用し、八丁味噌は代表的な豆味噌。
とのこと。
またここでちょっと話は逸れますが、市販の麹には生麹、乾燥麹、パウダー状の麹がありますので、生麹と乾燥麹についてご説明します。
「生麹」でつくられた味噌や甘酒などは、ご想像通り、乾燥麹に比べて味・香りが良く、「生」ということで麹菌も元気なのでしょう。
短い期間で発酵食品をつくることができます。
ですが、生麹は「生」だけに、長い期間保管できないという欠点があります。
生麹を長期間保管できないか、と考えられ、生麹の水分を飛ばし乾燥させた麹が「乾燥麹」です。
乾燥麹はその時使う分だけを水で戻し、残りは保管をすることができます。
私もほとんど乾燥麹を使っていますが、やはり家で少量のものをつくる場合は、乾燥麹がおすすめです。
・・・話を戻しますと、同じ日本でも、地方によって風土が異なるので、その土地での収穫物を原料にして仕込んだものが、その土地の味となっていったのですね。
わたしの場合は米麹でつくられた味噌がソウルフードというわけです。
ということで、私の初味噌は、昔から慣れ親しんだ、米麹が原料の米味噌にしました。
米味噌のつくり方はこちら
味の違い
麹のことを調べていると、それまであまり口にしていなかった「麦味噌」や「豆味噌」の味も気になってきました。
大きめのスーパーの売場に行ってみると、あります、あります。
「麦味噌」も「豆味噌」も。
まずは、麹の種類が異なる味噌を購入し、味がどんな風に違うのかを、味噌汁で食べ比べしてみました!
【米味噌】お米の旨味と甘味を強く感じます。
【麦味噌】甘味は少なく、あっさりとして、さらっとした飲み心地です。
米味噌とは違って、鼻から抜ける香りのようなものを感じます。
麦は小麦粉として、パンをつくる原料でもありますが、あの、パンを焼いた時の香ばしい香りのような・・・つまり麦特有の香りなのでしょうね!
【赤味噌】米味噌や麦味噌に比べて甘みが少なくて、独特のほろ苦さというか、渋みのようなものを感じます。
もちろん、嫌な渋みではなく、大人な感じ?
原料の異なる味噌をちょっと食しただけで、全く味が異なることを実感しました。
(味についての表現は、米味噌に慣れ親しんだ私が感じた味です。個人差があると思いますので、ご参考まで。)
特徴を知るとおもしろい
「米味噌」には、味噌をつくる時に欠かせない豆の仕込み方や熟成期間による赤味噌や白味噌という違い、そして地方によって呼び方が変わる、などで種類が多くあるように思えますが、日本で一番つくられ、食べられているスタンダードな味噌と言えます。
一方「麦味噌」は、九州地方や四国・中部地方のスタンダード。
比較的暖かな地方でつくられ、好まれています。
「豆味噌」はと言えば、ほぼ中京地域限定と言えます。
各地でそれぞれの定番味噌がある、と考えると、それぞれがその土地の食材にも馴染んでいるから、使われ続けているのだ、と受け取ることができます。
それを感じてからはわが家の冷蔵庫には、手づくりの米味噌、麦味噌、赤味噌が、そして買ってきた白味噌も控えているようになりました。
食材に合わせて味噌を使い分けたり、混ぜ合わせたりして味噌を使った料理を楽しむ始末です。
味噌汁も、バリエーション(味噌が違うだけですが)が増えただけで、腕が上がった気になります。
麹を使った調味料を楽しもう!
手前味噌づくりを始めて、今年で6シーズン目となりました。
毎年、米味噌をつくっていますが、毎回味も色も違います。
仕込みの時の具合や、熟成中の気温のせいなんですよね。
最近は夏が暑すぎるので、熟成度合いも変わってきます。
でも、どの年のも、味わい深く、市販のものよりも数段おいしく感じます。
余計なものが入っていない安心感もあります。
(そして実は美味しいお味噌のお味噌汁はおダシがいらないのですよ)
今年は昨年仕込んだ米味噌に加えて、麦味噌を仕込みました。
ここのところの夏は異常に暑いので、初秋にはお味噌汁として食卓に上がるでしょう。
味噌は生きています。
だから腐敗しないようにしておけば、まだまだ熟成します。
2年ものの味噌がどんな風に変化するのかも楽しみです。
また、麹を原料とする調味料は味噌だけではありません。
塩麹や醤油麹も手づくりし、万能調味料として使っていますが、最近はスーパーやお取り寄せで、地方の調味料も気軽に手に入れることができます。
これからもさらに、麹を使った様々な調味料に挑戦して料理を楽しんでみようと思います。
そのつくり方やお取り寄せした発酵食品たちも追ってご報告しますね。