私たちがよく口にする身近な食材の中には、しょうゆ、味噌、酢、納豆、酒、チーズ、ヨーグルトなど、数多くの発酵食品があります。
先人たちの知恵でできたこれら発酵食品。
もはや私たちの生活には欠かせないものとなっています。
発酵は微生物たち(発酵菌たち)が栄養を摂ってエネルギーに変える際、その微生物によってさまざまな物質を体内でつくって、うまみや香りなどを生み出し、栄養価を高めるプロセスです。
と、よくある感じで入ってきましたが、
微生物(発酵菌)って言われても何があるの?って思いますよね。
そこで今回は発酵菌たちの中でも、「3大」と呼ばれる方たちをご紹介します。
酵母(イースト:yeast)
単細胞の真核生物で球形や楕円形などの形をしていて、タンパク質やビタミンなどが多く含まれており、直径はわずか5~10ミクロン(1/1000ミリ)。
お母さん酵母から子どもが突起のようにぽこっと出て、それが大きくなっていき、お母さんと同じ大きさになると分裂、今度はその子が親になり・・・とこのスタイルを繰り返して増殖していきます。
酵母の種類により異なりますが、賛成を好むものが多く、そして暑さには弱いのです。
60℃ほどで死滅します。
ただ、寒すぎると活動を停止してしまうので活動の温度としては20〜30度が適温です。
酵母は糖類をごはんとし、アミノ酸、ビタミン類などをつくりながら、糖類をアルコールと炭酸ガスに分解して、炭酸を含んだアルコール飲料(ワインやビールなど)ができます。
また、発生した二酸化炭素ガスはパンの発酵(膨らみ)にも利用されています。
酵母で有名なのは、アルコールをつくる「サッカロミセス セレビシエ」。
一度では覚えられないですけど。笑
名前を聞いたことがあるのでは?
カビ
カビも酵母と同じく真核生物で、頭と胴体、根っこ(菌糸)という構造です。
頭に胞子が発芽して菌糸を出し、胴体ができて、その先端に胞子をつくり、その胞子が飛んで行き、そこでまた発芽・・・というサイクルで増殖します。
胞子の大きさは約4~8ミクロンで、酵母とほぼ同じぐらい。
ミクロンとか、もはやわからない世界なんですが、
「でも、カビってお餅とかによく生えてるし、目に見えるよね?」
と思いません?
あれはカビの集合体(コロニー)です。
なんだかお風呂場のカビとか想像しちゃうと頭痛くなっちゃう感じですが、
実はカビは酵素の宝庫といわれ、さまざまな酵素を作り出しています。
・タンパク質をアミノ酸に分解(プロテアーゼ)
・デンプンを糖化(アミラーゼ)
など。
これらの働きにより、人間に役立つもの、お醤油や日本酒、みりんなどをつくることができるのです。
カビは少ない水分量や高熱でも生きていけるのですが、酸素がないと死んでしまいます。
細菌
酵母と同じく単細胞で、でも酵母の1/10の大きさ、0.5〜1ミクロン。
形としては、球菌、桿菌(茎状)、らせん状菌などがあります。
さらに、球菌でもひとつだけで存在する「単菌」、2つ並んでいる「双球菌」、鎖のように連なっている「連鎖状球菌」、ブドウの房のように塊になっている「ブドウ状球菌」などがあるのです。
細胞は栄養分を取り込むと大きく成長して、2つに分裂する「2分裂法」で、ものすごいスピードで増えていきます。
「細菌」ってカビ同様、言葉のイメージが、なんだかあまり良くないですよね。
でも私の大好きなチーズをつくってくれる乳酸菌や酢酸菌、納豆菌などがあります。
乳酸菌・納豆菌・酢酸菌などは発酵に有用だってことで、優良発酵細菌属類(EM菌)と呼ばれます。
・・・菌に階級付けっていうのもすごい。笑
では、上記3種類をちょっとずつ、ご説明しますね。
乳酸菌
代表的なのは、よく聞くビフィズス菌やヤクルト菌。
糖類を分解して乳酸をつくり、ヨーグルトや漬物などの発酵の際に頑張ってくれる菌たちで、乳酸菌による発酵では食品は酸性となり、有害菌の増殖を抑制する殺菌効果などがあります。
だからお腹にいるビフィズス菌(善玉菌)が増えれば、腸内環境が良くなって、免疫力が高まるってことなんですね。
空気がなくても生育しますが、たまに酸素が供給されるような酸性の環境を好みます。
納豆菌
稲の穂に多く生息する細菌で枯草菌の一種です。
酸素がないと生育できませんが、栄養が不足するなど、その快適な環境が失われると、生存本能から胞子を形成し、芽胞という状態で生き続けます。
芽胞は100℃で30分間加熱殺菌しても、死滅しないとても強い子。
低温にもとても強く、-100℃でもOK、酸やアルカリ、紫外線にも強いのです。
タンパク質を分解して、納豆のネバネバや独特の風味をつくりますが、同時に、ナットウキナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼなどの有用な酵素やイソフラボン、ビタミンK2をつくります。
これらの酵素や栄養素は、血圧を下げたり、血液をサラサラにしたりする健康効果をもっています。
酢酸菌
エタノールを酸化させて酢酸をつくる細菌で、糖ではなく、酵母菌がつくったアルコールがえさとなります。
文字のごとく、お酢の生成に使われます。
酵母菌がつくったアルコール=ワインが酢酸菌の働きで、ワインビネガーになるってことですね。
そして空中に、普通にいるんです、この子は。
酸素があるところで活動し、液体の表面に皮膜をつくり、それがお酢のもとになります。
あとは、ナタデココ!そして紅茶キノコ。笑
酢酸にはクエン酸が豊富に含まれているので、疲労回復・便秘解消や、血圧を降下させる作用など様々な身体に良い効果があります。
微生物の組み合わせ
発酵食品には、微生物をひとつだけ使ったもの以外に、酵母・カビ・細菌を組み合わせるものもあります。
味噌、醤油、酒などがそれにあたります。
ただ、いろいろな微生物が働くため発酵の条件が難しく、有益ではない微生物によって腐敗してしまうことがあり、かなりのコツ・経験値が必要とされています。
でも、味噌、醤油、酒は日本特有の発酵食品。
難しいとされている発酵を難なく?こなす
日本の発酵文化ってすごい!ですよね。